制作ノート / アニメーションとテクスチャ

Silver Pines ロトスコープ

Silver Pinesの映像表現は、異なる素材の境目をあえて残すことで成り立っている。キャラクターは撮影した演技を1コマずつなぞって描き、背景には加工や加筆を施した写真を使う。2Dスプライトを3Dのシミュレーション空間に置き、影によって平面のキャラクターを背景と同じ空間になじませている。スクリーンショットや発表トレーラーでは、身体の動きに残る実写の痕跡、加筆されたテクスチャの下にある実物の質感、平面のキャラクターが生む立体的な存在感に注目したい。人物、表面、影を1つずつ見比べると、出自の異なる素材がそれぞれの持ち味を残したまま、同じ場面を作っていることが分かる。

写真を使った背景の質感が、場面に重みを与える。

Sheet 01

ロトスコープで演技の身体感覚を残す

昔ながらのロトスコープは、実際に撮影した演技から始まる。その映像を1コマずつなぞってアニメーションにすることで、単なる歩行の輪郭以上のものを残せる。服の揺れ、振り向いたときに遅れて動く髪、記号的なスプライトでは省かれがちな身体の小さな不揃いも表現できる。こうした細部はホラーゲームでは重要だ。動きを絵に置き換えても、そこに身体を持つ人物がいるという感覚を生むからだ。

プレイヤーにとっても、これは映像を見る手がかりになる。妙に具体的なポーズや、定型的なループではなく実在の人物らしい間合いが見えたら、その手作業の痕跡も技法の一部だ。動きには、『プリンス・オブ・ペルシャ』や『モータルコンバット』など、1990年代のロトスコープ作品の面影もある。ただし、隠された物語の事実やキャラクターの行く末を示すものではない。演技と描画の両方を読み取れるようにしているため、同じ画面に記録映像のような古びた感触と不気味さが共存する。

Sheet 02

参考映像の演技が人間らしい動きを支える

制作では、衣装を着たチームメンバーや友人の演技を撮影し、アニメーションの参考にしている。そのため、動きには実際の身体を観察した感触がある。衣装は後から貼るテクスチャだけではない。身体の曲げ方、シルエットの目を引く部分、室内で身振りが占める空間にも影響する。その映像をなぞって描くことで、完成画を実写風にせずとも、元の演技の痕跡を残せる。

見るうえでは、整えられた動きと、実際に演じられた動きを区別すると分かりやすい。演技には間、重心の移動、少しぎこちない角度などが入り、その人物固有の存在感が生まれる。衣装と撮影された演者は、最終的なスプライトに描き起こされる前から、こうした特徴をシルエットに表す。身体が町と同じ物理空間に存在できそうに見えることで、危険も身近に感じられる。この手作りの演技の質感は映像表現の一部であり、隠されたゲーム上の合図ではない。

Sheet 03

写真が町の表面に過去の痕跡を残す

背景担当のアーティストは、実物の表面を撮影した写真を加工し、上から描き加えてテクスチャを作る。この工程により、壁、道、室内には、ゲーム素材になる前から存在していた物の不規則さが残る。粒状感、摩耗、染み、素材のむらが、様式化された絵の下から見える。その結果、町は使い回しのパネルを並べた場所ではなく、物理的な過去を持つ場所に感じられ、半ば見捨てられた物語の雰囲気を支えている。

参考写真は、実在する場所を記録した証拠ではなく、画作りの素材だ。カッレ・シット・ウィンベリの写真が町の表面の元になり、そこに加工や加筆が施される。広い面の中に細かな変化がある様子や、形状だけでは伝わらない部屋の個性をテクスチャが生む様子に、その出自を見つけられる。表面、照明、室内でのキャラクターの位置を見比べると、この工程がスクリーンショットにどう表れているか分かる。

Sheet 04

平面のスプライトも3D空間の一部になる

Silver Pinesは2Dスプライトを3Dのシミュレーション空間に配置し、影で奥行きと量感を与えている。この技法なら、キャラクターは手描きの持ち味を保ちながら、場面の立体的な構造に応じて見え方を変えられる。部屋の端では平面に見える人物も、足元に影が落ちたり、手前の壁などに進路が隠れたり、カメラによって身体と背景の位置関係が変わったりすると、その場に立っている実感が生まれる。

この相反する感触も、本作の映像表現の一部だ。絵は空間から切り離されず、空間も絵の個性が埋もれるほど均質には整えられていない。影が奥行きの手がかりとなり、平面のスプライトは背景と見た目を区別できるまま、部屋の一部になる。人物が輪郭を保ち、背景が奥行きを担う様子と、その2つが重なって生む不穏さに注目したい。この制作手法が説明するのは見た目であり、物語の解説やゲームシステムの保証ではない。

Silver Pines 発表トレーラー

再生時にプレイヤーを読み込み、YouTubeの動画を開きます。
確認範囲写真とトレーラーを見比べ、演技を元にした人物、加筆された表面、平面のスプライトを室内に定着させる影を探してみよう。